#493 うどんテイスティング・・・「さぬきの夢」乾燥うどん(乾麺)

f493ご存知のように「さぬきの夢」は、うどん県(香川県)のうどん県によるうどん県のための小麦で、正確には、香川県で育種されたオリジナル小麦の総称です。初代「さぬきの夢」は、2000年に開発された「さぬきの夢2000」ですが、現在はバージョンアップされた二代目の「さぬきの夢2009」へと切り替わっています。そもそもうどん県オリジナル小麦の開発に至った理由は、「これだけさぬきうどんが認知されてきたにも拘らず、オリジナル小麦がないのは如何にもまずいではないか!」ということでしたが、その辺りの事情は、新着情報#343をご覧ください。

さて今回は、「さぬきの夢」乾麺2種を試作し、4名でうどんテイスティングを実施しました。乾麺の太さは、「番手」と呼ばれる単位で表現されますが、これは30mmの幅に入る本数を表します。例えば#8(8番)は、8本とれるので、1本の太さは30÷8=3.75mmとなります。3.75mmという数字だけ見ると細く感じますが、乾麺はゆでると水分を吸収してかなり太くなります。実際乾麺のJAS規格では、#8がうどんでは一番太く、これ以上になると「ひらめん」となり、また一番細いうどんは#16(1.875mm)となります(詳細は新着情報#070)。そして今回は#8と#14の2種を試してみました(画像参照)。

ゆで時間は#8が17分、#14が6分とかなりの開きがありますが、乾麺は乾燥させてあるため、水分が中心部分まで浸透するのに時間がかかるのです。試食前は、当然太麺(#8)が、骨太でいかにもうどんらしい食感であると予想したのですが、意外にも少し「ピンピン」とした食感で、しなやかさが不足しているように感じました。逆に#14は、細いにも拘らずしなやかで、粘りがあり、そして「さぬきの夢」特有の「甘み」が強く感じられました。確かに太いうどんは魅力的ですが、今回はテイスター4人全員が、総合評価として#14の方が魅力的であると判断しました。

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ただ一つ注意点があります。弊社のうどんテイスティングは基本的には、打ち上げた状態、所謂ざるうどんとして比較しています。よって再度湯煎したかけうどんの状態では、印象が大きく異なり、また違った結果になることも充分に考えられます。それにしても、#14の「ゆで時間が僅か5分少々」というのは大きなメリットです。特にゆで湯から直接どんぶりに打ち上げる、「釜抜き」は手間要らずで、しかもざると比較して更にゆで時間を短縮できる点を考慮すれば、魅力的な商品だと感じます。

次に太さを#14に固定して、「さぬきの夢」と「ASW 」の2種を比較してみました。ASW単独では気づきませんでしたが、両者を並べて比較してみると、ASWの淡黄色は食欲をそそり、魅力的に映ることを再確認しました。しかし一方で、「さぬきの夢」はその上品な白さが特長的で、外見では両者、それぞれの持ち味というか存在感を主張できているように感じます。さて肝心の食感と食味ですが、評価が分かれました。ASWは歯切れが良く、程よい弾力感があり、また風味も充分で、全体としてバランスのとれか麺であることがわかります。一方「さぬきの夢」は、ASWのようなはっきりとした弾力感はなく、大袈裟に言うと蒲鉾のような食感です。またあっさりというか、すっきりとした食味が特長的で、噛んだ後一呼吸遅れて口内に拡がる仄かな甘みが印象です。

つまり全ての面において、ASW と「さぬきの夢」は対象的で、これが我々テイスターの間でも好みが別れる理由です。ここで改めて現行の「さぬきの夢」決定の経緯を思い出しました。現在の「さぬきの夢」の品種は「さぬきの夢2009」ですが、最終候補に残ったのが香育20号と香育21号でした。どちらも素晴らしい品種でしたが、前者はどちらかというとASWと類似点があるのに対し、後者はまるっきり異なる点が評価され、後継品種に決定されました。そして今回改めて、その決定は正しかったと感じます。

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