#419 食パンの食味テスト+小麦粉について・・・強力粉(1等粉 vs. ストレート粉 vs. 2等粉)

f419#415では特等粉と1等粉とで打ったうどんの食味試験をおこないました。うどんは小麦粉生地をゆでるせいか、小麦粉のグレードによる色調や食感の違いがよくわかりました。一方、#416では同様に、特等粉と1等粉を使用してパンを焼いてみましたが、うどんのような明確な差異は見られませんでした。実際、「どっちが好きか?」と聞いた結果が10:9なので、差はないといっても良いかもしれません。そこで今回は、もう少しグレードを落とした粉を使用して、食パンの食味テストをおこないました。

今回使用した小麦粉は、1等粉、ストレート粉、2等粉の3種類で、そのグレードを示す灰分は夫々0.40%、0.45%、0.71%でした。小麦粉のグレードについては、「小麦粉のはなし」、そして#417で説明しましたが、ここでは、更に補足いたします。1等粉というのは、灰分値が約0.45%までのものを指しますが、これは小麦の中心部分60-65%程度(画像では62%)を抽出したものに相当します。そして2等粉というのは、1等粉を取り除いた残りの、更に10数%の小麦粉を指します。

昔は、各グレード毎に価格差がはっきりと違っていたので、3等粉、4等粉と取り分けていましたが、現在は下級粉価格が下落したせいか、各グレード粉をキチンと取り分けるよりも、1等粉歩留まりを上げることの方に関心が移っているようです。ところでストレート粉(一本挽粉)とは、全ての上がり粉を混ぜたもの、つまり取り出した胚乳部分を全て混ぜて粉にしたものをいいます。画像の場合は1等粉と2等粉だけを加えたものなので厳密にいうと、ストレート粉ではありませんが、大体こんな感じだと思ってください。

f419_2

さてこの3種類をペッカしたもの及び焼きあがったパンが、下画像でそれぞれ左から、1等粉、ストレート粉、2等粉となっています。2等粉は明らかに色調が劣り、それは焼きあがったパンも同様ですが、その食味試験の結果は意外なものでした。試食してもらった21名に好きなパン1点だけ選んでもらったところ、1等粉:ストレート粉:2等粉=19:2:7となり、1等粉パンの人気が高かったのは当然としても、2等粉パンも一定の支持があったことは想定外でした。1等粉パンはもっちり感があるのに対し、2等粉パンは少しパサパサしていましたが、その風味(?)が評価されたのかもしれません。

ペッカテスト

ペッカテスト

左より、1等粉、ストレート、2等粉

左より、1等粉、ストレート、2等粉

うどんの場合は特等粉、1等粉、2等粉では明らかに違いがあり、その評価もきれいに分かれました。1等粉うどんはつるみ感があって喉越しが良いのに対し、2等粉うどんの、くすんだ色調そして「ぼそぼそ」とした喉に引っ掛かるような食感は、明らかに1等粉うどんに比べ劣っていました。つまり同じ2等粉を使用しても、うどんの評価は芳しくないのに対し、パンはそこそこの支持があるという点で両者はかなり異なります。

この違いが生じた理由のひとつは、両者の調理方法にあると考えます。小麦は下級粉になるほど小麦粉の表皮部分、つまりふすまが混じってくるようになります。そして小麦の胚乳部分は柔らかくて脆いのに対し、この小麦ふすまは、強靭でごわごわしているので、調理されにくい性質があります。つまりふすま片が混じっていると、ゆでただけではその繊維質のもつ「ごわごわ感」は解消されないので、うどんにした場合、「イガイガ感」や「ぼそぼそ感」が残ります。一方パンのような焼成食品、つまり焼いて調理すると小麦ふすまは、パリパリになり食べやすくなるので、この辺りに違いがあるのかと考えます。つまり簡単にいうと、うどんなどの麺類は、ゆでて調理するので、ふすま部分が混入しない1等粉使用が食感的には望ましい。しかしパンのような焼成食品は、焼いて調理するので、小麦粉の許容範囲が広いと考えます。