#627 段階式製粉方法の分類・・・4つの処理系統

f627昔は石臼で挽いていた小麦も、現在はロール製粉機が使用されます。ロール製粉機は、鉄でできた一対の円柱状のロールのかみ合い部分に、小麦またはストックを通過させることにより、挽砕する機械のことです。製粉工場の中には、このロール製粉機が沢山並んでいます。外観はどれも同じなので、どのロール機も同じ処理をしているように見えますが、実際はそうではありません。各ロール機は、流れてくる様々なストック(小麦粉になるまでの途中の中間製品)に応じて、それぞれ役割分担が異なるからです。

現在の製粉方法は、「段階式製粉方法」という方式を採用しています。これは小麦の粒を一度に小さくするのではなく、「段階的」に少しずつ小さくする方法です。玄米は白米の部分が硬く、表面を覆っている米ぬか部分が軟らかいために、表面を軽く研磨するだけで、簡単に精米が完了します。これに対し、小麦は事情が大きく異なります。小麦表面の表皮部分(小麦ふすま)は食物繊維であるため、強靭でごわごわしているのに対し、胚乳部分は柔らかくで脆くなっています。よっていきなり細かく挽き込んでしまうと、小麦ふすま片が小麦粉に混入してしまい、小麦粉の品質を低下させます。つまり小麦粉の中に小麦ふすま片の混入を避けるため、「段階式製粉方法」が必要になります。

段階式製粉方法は、17世紀にフランス人ピエゴーにより始まったとか、16世紀には既に開始されていたなど諸説あります。しかし16~17世紀にフランスで始まったことは間違いなく、別名「フランス方式」とも呼ばれています。それまでの製粉方法は、小麦を一度に細かく挽き、篩いにかける「一発勝負」でしたが、これでは表皮の混入が避けられません。「段階式製粉」がその後、フランスで主流となるのは、18世紀に入ってからで、19世紀になるとオーストリアやハンガリーといったヨーロッパ諸国にも普及します。

この段階式製粉方法の「挽砕方法」の分類方法についてはいくつか考え方がありますが、ポスナー(E.S. Posner)は次のように分類しています。つまりこの4つの系統を組合せながら、一粒の小麦粉は、約50種類の上り粉に取り分けられ、その後グループ化されて、小麦粉となります。

f627_2①ブレーキ系統(Break system)
ストックを砕かずに、皮部を開くように「破砕」する工程です。「Break」とは「割る」ことで、小麦を最初に大きく割るロール機には、「1B」という名前がついています。つまり「1st Break」は小麦を最初に大きく「バーン」と割る工程で、画像のようなイメージになります。1Bロール機を通過したストックは、篩いにかけられ、一番大きなストックが、2Bロール機で更にもう一段階小さくなります。

②サイジング系統(Sizing system)
小麦製粉では、胚乳の大きな塊をセモリナ(デュラム小麦の粉もセモリナというので紛らわしい)といい、これを小さくする工程をサイジング工程といいます。更に紛らわしい事に、セモリナのことをアメリカでは「サイジング」というので、セモリナを小さくする工程をサイジング工程といいます。この処理を行うロール機は、1SC、1SFといった名前がついています。ちなみにSはセモリナ、Cは粗い(Coarse)、Fは細かい(Fine)のことで、大きなセモリナ、小さなセモリナを処理するロール機となります。

③粉砕系統(Reduction system)
セモリナよりも小さな胚乳の塊は、「ミドリングス(middlings)」とよばれ、ミドリングスも段階的に小さくなります。この処理を行うロール機には、1M、2Mといった名前がついています。

④最終系統(Tailing system)
テイル(tail)とは、尻尾のこと、つまり最終工程を指します。この最終段階で処理される小麦粉は、主食には不適となり、家畜やペットフード用に使用されます。この処理を行うロール機は1Tとなります。

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