#575 全粒粉うどん

f575全粒粉(ぜんりゅうふん)とは言葉からイメージすると、「小麦を丸ごと挽き込んだ粉」となります。ただし日本においては、残念ながら公的機関による「全粒粉は◯◯でなければならない」という厳密な定義がありません。よってゆるやかな常識的な基準で「全粒粉」は流通しています。一方アメリカでは、FDA(Food and Drug Administration = 米国食品医薬品局)及びAACC (American Association of Cereal Chemists = 穀物化学者学会)が、全粒粉の定義を次のように定めています(詳細は#430をご参照ください)。
【全粒粉①(狭義)】
小麦をそのまま丸ごと製粉してできあがった小麦粉
【全粒粉②(広義)】
同じ原料の小麦から作られたものでなくても、その小麦粉の成分組成が全粒粉にほぼ等しいもの、つまりその比率がほぼ、胚乳83%、ふすま(表皮部分)15%、胚芽2%となっている小麦粉。

全粒粉①は自然な定義であるのに対し全粒粉②は、全粒粉の解釈を広げています。この解釈を広げた理由は、全粒粉①は小麦粉に対し食味食感において一歩譲るためであると推察します。理由はこうです。小麦は縦に溝が走っていて、ここは凹んでいるためにチリやゴミなどの不純物が溜まり易い構造になっています。よって丸ごと挽くと不純物も一緒に挽き込んでしまい、その結果雑味が増大します。この雑味の混入を防ぐには、小麦のそれぞれの部位を分別処理する方法が不可欠で、これが全粒粉②に相当します。

つまり全粒粉②は全粒粉①と同様の栄養成分を保持しながら、食味食感の向上が可能です。FDAやAACCが全粒粉②を積極的に推奨する理由は、小麦ふすまには自然の食物繊維が豊富に含まれ、小麦粉を全粒粉に置き換えることで、私たちの食生活において不足している食物繊維を、日常の食事から摂取できるからです。小麦ふすまに含まれる食物繊維の効用は、今日ではよく知られていますが、これを端的に説明している好例としては、例えば「ほどほど健康術(#245)」をご覧ください。

前置きが長くなりましたが、今回加熱処理後微粉砕した小麦ふすまを使用したうどんを、うどんテイスティングしました。小麦ふすまの含有率は5%と10%の2種類で、後者はほぼ全粒粉②に適応するので、全粒粉うどんといっても良いと考えます。小麦粒の大きさは、小麦の種類(粒の大きさ)により異なり、よってその表皮部分の比率も異なります。よって一般には、10%程度のものであっても、全粒粉として差し支えないと考えられています。

ふすま入りうどんは、明らかに小麦粉100%のうどんよりも色は濃く、全粒粉うどん(ふすま10%混入)になると、蕎麦といっても誰も疑わないような色調です。ゆでてみるとその傾向は一層顕著で、正にそばそのものです。肝心の食味食感については、正直どちらも満足のいくものでした。従来、雑味となる「ふすま臭さ」は感じられず、逆に小麦の風味として好意的に感じることができます。特に全粒粉うどんは、10%混入しているにも拘らず全く違和感がないのは意外でした。

実は「ふすま入りうどん」はこれまで何度が試したことがありますが、混入率は2%程度が限界だと考えていました。そこで従来と今回との違いは何かと考えたところ、それは小麦ふすまのタイプの違いでした(従来の「粗挽きふすま」に対し、今回は「微粉砕ふすま」を使用)。小麦ふすまの主成分は食物繊維です。そして粗挽きふすまのそのごわごわとした食感はゆでただけでは変化せず、そのままうどんに引き継がれます。よって噛んだり、喉を通過したりするときに、その粗挽きふすまが「イガイガ感」となり不快な食感として感じてしまいます。

一方、粗挽きふすまを微粉砕ふすまに置き換えると、「イガイガ感」は消失し、うどんは喉元をスムーズに通過します。加えて小麦ふすまは、風味の向上に繫がるとも感じます。このように全粒粉うどんは、可能性を感じさせる、更なる開発の価値があるうどんであると感じます。

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