#572 「さぬきの夢」第24回芦原科学賞受賞

f572高松市出身の故・芦原義重(あしはらよししげ)氏は、永らく関西電力の社長・会長を務められました。(財)かがわ産業支援財団では、その芦原氏からの寄付金を基金とし、香川県内の産業技術の高度化及び産業の振興に寄与することを目的とした「芦原研修支援事業」を実施しています。「芦原科学賞」はその一環として設けられ、香川県内の産業技術の高度化及び産業の振興に寄与したと認められる成果をあげた個人または研究グループに授与されます。

平成5年度から始まったこの芦原科学賞には、「大賞」、「功労賞」、「奨励賞」の三部門が設けられ、平成29年3月1日の第24回(平成28年度)芦原科学賞贈呈式においては、「さぬきうどん用小麦品種『さぬきの夢2009』の育成」というテーマで、香川県農業試験場、本場さぬきうどん協同組合、そして香川県製粉製麺協同組合の3団体が栄えある「芦原科学功労賞」を受賞しました。うどん県の小麦である「さぬきの夢」が芦原科学賞の対象として評価されたことは、とても嬉しいニュースでした。

ご存知のように「さぬきの夢」は香川県で開発されたうどん用小麦粉の総称です。香川県農業試験場では、1991年(平成3年)より香川県独自の小麦の育種が始まり、そこで開発された小麦品種には、順番に「香育◯◯号」という系統名が付けられています。そして2000年にはうどん用小麦として「さぬきの夢2000」が開発されましたが、これは香育7号、つまり香川県農業試験場で開発された7番目の小麦品種ということです。「2000」という数字は、開発年の西暦2000年に因んだ数字です。

その後も小麦品種の開発は続き、香育20号と香育21号が「さぬきの夢2000」の後継品種として候補に挙がり「1000人無料試食アンケート大会」の結果、香育21号が後継品種に決定されました。前回同様、開発年が2009年であったので、後継新種は「さぬきの夢2009」と命名されました。よって「さぬきの夢2000」も「さぬきの夢2009」も「さぬきの夢」であり、前者が初代「さぬきの夢」、後者が二代目「さぬきの夢」となります。

話は戻りますが、第24回芦原科学功労賞の受賞理由は、この「さぬきの夢2009」の育成でした。「さぬきの夢2000」は確かに国産小麦らしい特長を備えた小麦で、素晴らしいさぬきうどんを提供してくれました。ただうどんの「つなぎ力」の源であるグルテンの性状が少し脆いことが唯一の問題点として、当時指摘されていました。そこで「さぬきの夢2009」ではこの問題点を改善し、より作業適性の良好なさぬきうどん用小麦となった点が評価され、今回の受賞につながったのではないかと考えています。

初代「さぬきの夢」は2000年、そして二代目「さぬきの夢」は2009年に登場しました。よってそろそろ次世代「さぬきの夢」の登場を期待したくなるような時期に差し掛かっています。農業試験場では既に次世代候補が挙がっているはずです。三代目「さぬきの夢」からはどんなさぬきうどんができるのか、いまからワクワクドキドキとても楽しみです。

香川県内では現在2種類の麦が栽培されています。ひとつはハダカムギ(オオムギの一種)、そしてもう一つがさぬきうどん用小麦の「さぬきの夢」です。一昔前まではハダカムギの主たる用途は味噌でしたが、時代を反映してか最近は専ら焼酎の原料として使用されるようになりました。5月23日現在、ハダカムギは一足先に収穫を終えました。そしてこの週末からは「さぬきの夢」の収穫に入ります。今年はこれまでのところ、雨に祟られることもなく「ハダカムギ」、「さぬきの夢」共に生育はとても順調です。ただどれほど順調に生育しても、収穫前の大雨で品質は一気に低下します。何とか収穫を終えるまでは、雨が降らないよう祈るばかりです。そして収穫が終わると一気に田植えの準備に取り掛かります。

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