#484 ISO22000へ向けてキックオフ

f484製粉会社は小麦粉という食材を製造している食品工場であるので、衛生管理には常に気をつけるべきであることは重々承知しています。特に昨今は、食中毒や異物混入に代表される食品事故は、大きな社会問題にも発展する可能性もあるため、衛生管理は製品の品質と同等、もしくは場合によってはそれ以上に重要であると考えられています。よって私たちも、当然ではありますが、衛生管理には普段から気を遣っています。建屋が老朽化しているのは、致し方無いとしても、私たちが常に衛生管理の意識を持つことで、ハード面での欠点は、ある程度カバーできるのではないかと考えてきました。

しかし一方で、我流というか私たちの価値基準だけを拠り所に、衛生管理をやり続けて大丈夫なのかという不安もあります。つまり内輪だけで処理すると「慣れ合い」が生じるかも知れないし、また日常化し過ぎているために、真に正しい判断ができなくなってしまう恐れもあるからです。そのような経緯で、今回初めて外部コンサルタントに依頼し、食品の衛生管理を実践することにしました。具体的にはこれから10ヶ月間の準備期間をかけて国際的な食品安全マネジメントシステム規格であるISO22000認証の取得を目指すことになりました。以下私たちの理解の復習も兼ねて、その概略を簡単にご説明いたします。

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まず食品安全の仕組みを構築する上で、最初に手がけなければならない土台を①「前提条件プログラム(PRP=PreRequisite Program)」といいます。 「前提条件」と表現するとわかりにくいのですが、「前もって必要なもの」と言えばしっくりきます。具体的には工業分野で用いられる5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)に2S(洗浄・殺菌)を加えた食品衛生における7S が基本となります。2S を追加する意味は、職場環境を単に清潔にするだけでなく、微生物除去レベルまでの清潔を実現するためです。食品衛生を実現するには、この7Sが下準備としてどうしても必要となります。

土台が整うと、次に導入すべきは、②HACCP(ハセップ)という考え方です。ハセップとはHACCP(Hazard Analysis & Critical Control Point) = 危険要因分析+重要管理点方式のことで、前者は製造工程で危害が混入しそうな危険箇所を分析し、後者は分析で明らかになった重要な危険点(工程)を重点的に管理するという手法です。この手法は、その昔NASA(アメリカ航空宇宙局)で宇宙食の安全性を確保するために開発された手法です。宇宙にいってお腹が痛くなっても、誰も治療することができないので、そうならないよう未然に食品事故を防ぐシステムを構築しましょうということです。

そしてISO22000では①、②に加え、③相互コミュニケーションと④システムマネジメントが要求されます。③は食品安全にかかわる情報伝達を指します。具体的には原料メーカー、添加物メーカー、設備機器メーカー、包装材料メーカーといった供給者(川上側)だけでなく輸送業者、卸売業者、小売業者などの川下側との円滑なコミュニケーションが求められます。また④は食品安全を担保する仕組みを常に改善し、またそれが確実に機能していることが求められます。

以上①PRP②HACCP③相互コミュニケーション④システムマネジメントが揃って初めてISO22000が機能することになります。ただ正直に言うと③と④については、未だによくイメージが湧きませんが、これから10ヶ月間の準備期間を経て、徐々に明らかになることと思います。専門的なことはさておき、現時点では外部コンサルの意見を取り入れることで、少なくとも次の点において良かったと考えています。

●身内だけでの自己改革では、どうしても甘えが生じ、厳しく対応できないことがあるが、第三者の判断、意見であれば否が応でも従わざるを得ない。
●外部からの視点で見ることによって、より客観的な判断が可能。
●きめ細かい衛生管理は専門的な知識がないと対応できないので、外部に依存せざるを得ない。