#479 「さぬきの夢」ブランド化推進検討会2015

f479小麦の収穫も終わり、さぬきは現在田植えの真っ最中です。さて今年は雨に祟られることもなく、「さぬきの夢」の収穫はまずまずのようでした(詳細は追ってアップの予定です)。さて少し前になりますが、5月28日に香川県農業試験場にて、「『さぬきの夢』ブランド化推進検討会」がありました。今回はその中で気になった2点をご紹介いたします。

【1】「さぬきの夢」後期追肥による高タンパク化
小麦も植物なので、大きく育つには肥料が必要です。基肥(もとごえ)とは別に、栽培期間中に追加する肥料のことを「追肥」といいますが、この追肥の有無もしくは追肥の時期によっても収穫時の小麦は大きく影響を受けます。今回、農業試験場では「さぬきの夢」に対し、(1)追肥なし、(2)3/28に追肥、(3)4/15に追肥、(4)4月30日に追肥の4通りの栽培方法を比較しました。細かく説明すると長くなりますので、ごく簡単に結果をまとめると次ようになります:

①追肥を実施すると収量が多くなる。
②追伸を実施すると製粉適性が向上する。
③追肥を実施すると、また実施時期を遅らせる程、タンパクが高くなる。

f479_2①の結果により生産農家は追肥をした方が、収量が増えるので追肥は経営にとってプラスになります。また②の結果により、小麦の製粉適性が向上するので、追肥は製粉工場にとっても歓迎すべきことです。しかし良いことばかりではありません。③の結果により小麦に含まれるタンパク質が高くなり、これが肝心のうどんの食味にどう影響するのかが問題です。今回はこの4通りの栽培方法の小麦でうどんを打ち、更に市販の「さぬきの夢」うどんを加えた5つのうどんで簡単な食味試験をしてみました(右画像)。

結論から言うと、施肥を実施しない普通の「さぬきの夢」の食味がベストでした。施肥をすると小麦のタンパクが高くなり、それがうどんを噛んだ時の「コツコツ」とした硬い食感に繋がるようです。うどんの硬さはタンパク質が高くなる程、顕著に現われました。「柔らかい中にもコシがある」というのは、一見矛盾した表現のようですが、これがさぬきうどん本来の特徴です。つまり硬いばかりのうどんでは不十分で、ソフトな中に如何にしっかりとしたコシが表現できるのかがポイントとなります。

【2】次世代「さぬきの夢」
「さぬきの夢」は香川県で開発されるオリジナル小麦の総称で、初代「さぬきの夢」は2000年に開発された「さぬきの夢2000」でした。そして現在流通している「さぬきの夢」は、製麺適性が向上した二代目「さぬきの夢」(品種名は「さぬきの夢2009」)です。香川県農業試験場で開発されている小麦品種には、順番に「香育◯◯号」という系統名がつけられていますが、「さぬきの夢2000」は、香育7号、「さぬきの夢2009」は香育21号となります(新着情報#286新着情報#343)。

つまり沢山の小麦品種が開発されていますが、その中で従来品種を超えることができるのは僅かということです。開発は現在も続行中で、「さぬきの夢」の後継品種として有望視されているのは、次の2品種です:

香育27号(交配組合せ:西海185号/中国149号)
香育28号(交配組合せ:中国152号/香育16号)

新品種は、一般論として「従来品よりもより良い小麦」ということが条件ですが、この「より良い」という価値観はそれぞれの立場によって異なります。「さぬきの夢2000」はうどんが切れやすいという問題点があり、「さぬきの夢2009」はその問題点をかなり解決しました。しかし一方で、「多少作業適性に問題があっても、「さぬきの夢2000」うどんの食味の方が好きだ」という声もありました。

生産農家は栽培しやすく、収量の多い小麦品種を、また製粉会社は、製粉適性が良好で歩留まりの高い小麦を希望します。そしてうどん専門店の経営者は、うどんの打ちやすい小麦、消費者は、コシのある美味しいうどんを求めます。このように一口に「良い小麦」といっても、その意味するところは、其々の立場で異なります。よって新品種となると、立場の異なる生産者、製粉業者、うどん店といった皆さんが大筋で納得することが重要です。次世代「さぬきの夢」も、今後色々検討を重ねながら決定されることになります。

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香川県農業試験場

香川県農業試験場