#416 食パンの食味テスト・・・強力粉(特等粉vs.1等粉)

f416#415では特等粉と1等粉とで打ったうどんの食味試験をしてみました。食味試験では確かに特等粉うどんの方が滑らかでのど越しが良く、また見た目も冴えた色調でした。反面、食味については、1等粉うどんの方が「味が濃い」ように感じました。ただ食味テストは少量でしたので、丸々1玉、更には何度も食べ込んでくると、またその評価が違っても不思議ではありません。何れにしてもうどんでは、両者の違いは明らかに判別できたので、こんどは食パンで試してみることにしました。

さて右表は今回試した強力粉と前回の「さぬきの夢」の分析結果です。両者の取り口は全く同じであるにも拘らず、分析結果はかなり異なっています。つまり同じように製粉して40種類の上がり粉にとり分け、それを同じようにグループ分けしたにも拘らず、小麦粉の性質はかなり異なります。例えば特等粉同士で比較すると、「さぬきの夢」のグルテンは21.8%であるのに対し、強力粉のそれは34.5%と両者には実に12.7%もの開きがあります(灰分、グルテン、タンパク質などの用語については、小麦の話、及び小麦粉のはなしをご覧ください)。

f416_2小麦粉の重要な特性値としてタンパク質がありますが、これはグルテンと同義語です。小麦粉には80種類以上のタンパク質が含まれていますが、その主要タンパク質がグルテニンとグリアジンで、この2つが水と一緒になって小麦粉特有のグルテンを形成します。ここでいうグルテンとは、所謂ウェットグルテン(Wet gluten、湿麸)で、その重量の2/3は水分なので、これを乾燥させるとほぼ1/3になります。つまり今回の場合は、34.5/3=11.5%、21.8/3=7.3%となり、これがそれぞれの小麦粉のタンパク質量にほぼ等しくなります。

小麦粉の種類は、そのタンパク質の多い順に、強力粉、中力粉、薄力粉と呼ばれていますが、実際その通りになっていることが確認できました。ただ「さぬきの夢」は、厳密に言うと薄力粉に分類されるべきですが、一応麺用ということなので、中力粉と呼んでいます。話は戻って、タンパク含有量に大きな違いがでた理由は、元の小麦の性質によるものです。つまり硬質小麦は多くのタンパク質を含んでいるので、その小麦粉はタンパク質を多く含む強力粉になります。「さぬきの夢」をいくら頑張って工夫して製粉したところで、強力粉にはなりません。元々「さぬきの夢」に含まれるタンパク質が少ないからです。

また灰分についても大きな違いがあります。特等粉で比較すると、強力粉の灰分は0.363であるのに対し、「さぬきの夢」、は0.319と両者には0.044もの開きがあります。これは同じ種類の小麦粉であれば、優に1等級は違う値です。この違いもやはり元の小麦の性質によるものです。小麦全体で比較すると、硬質小麦は灰分が1.5~1.7%もあるのに対し、中間質小麦は1.2~1.3%しかないので、その差がそのまま小麦粉に引き継がれることになります。簡単にいうと、強力粉は中・薄力粉に比べて、色が黒くてタンパク質が多いということになります(但し、「さぬきの夢」は軟質小麦であるにもかかわらず、小麦全体の灰分は1.6%と高いのですが、これは粒が小さいために、表面積の割合が相対的に大きくなり、その結果灰分が高くなると考えられます)。

さて前回同様強力粉の特等粉と1等粉をペッカテストすると、やはりグレードの高い特等粉の方が、白いことがわかります。それではこのグレードの違いは、うどん同様、食パンにした時に違いがわかるかどうか、期待を持って焼いてみました。しかし2台のHB(ホームベーカリー)で同じように焼いたパンは同じように焼き上がり、またスライスした断面も同じような色調で、明確な差異は認められませんでした。それでは食味試験はどうかと思い、気合を入れてテイスティングをしてみましたが、どちらも「ふわふわ」していて、やはり違いはわかりませんでした。そこで社員の皆さんに両方を試食してもらい、好みの方を選んでもらったところ、結果は何と、10:9と見事に二分されました。

実際、後で聞いてみても「よく違いがわからんかった」という答がほとんどでした。パン屋さんで試してもらうと、ひょっとしたら違う結果になるかも知れませんが、少なくともHBレベルでは明確な違いはないということになります。よって「食パンには普通の1等粉で充分ではないか」という結論になりました。

特等 - 1等 - 特等 - 1等 - 特等  の順に並んでいます。

特等 – 1等 – 特等 – 1等 – 特等 の順に並んでいます。

焼き上がり直後(1等粉 vs. 1等粉)

焼き上がり直後(1等粉 vs. 特等粉)

特等粉 vs. 1等粉

1等粉 vs. 特等粉 ・・・ うどんのときのような違いは見られませんでした! (-_-;)