#412 うどんティスティング・・・家庭用自動製麺機その②

f412この製麺機が250gの小麦粉をうどんにするまで、たったの12分(撹拌5分、押出機での排出に7分)。もちろん加水率とか熟成時間など、通常の製麺条件とはかなり異なりますが、うどんってこんなに簡単だったのかと、正直思いました。ゆでると短麺がかなりできましたが(下画像)、うどんの出来栄えはそれほど悪くはありません。押出機なので包丁切りの食感とは異なりますが、麺質はしっかりしているし、そこそこいいレベルに仕上がっています。しかし問題もいくつか気になったので、まとめてみました。

①短麺が多い。
最初に気になったのは、短麺が多い点ですが、これはグルテンが充分に形成されていないのが理由です。うどんが切れずに繋がっていることができる理由は、ゆでる前と後では異なります(#195)。つまりゆでる前のうどんの「つなぎ力」の源はグルテンの粘弾性ですが、ゆでた後の「つなぎ力」の主役は「でんぷん」に移ります。そしてグルテンの粘弾性を最大限に引きだすためには、「水」、「捏ねる動作」、そして「適温で暫く放置する」という3つの要素が必要です。しかし今回の加水率34%は通常の手打ちうどんの45~50%と比較してかなり少なく、またピンタイプのミキサーだけを使用しているので、「捏ねる」力も充分ではありません。更に通常であれば少なくとも1時間程度の熟成時間をとりますが、今回はそのまま押出機から押し出されるので、熟成時間はほとんどありません。つまり必要な3要素すべてが不十分といえます。

その代わり押出機ではかなり圧力をかけて生地を固めているので、その「圧力」も利用しながら、つながって排出されます。ただ一見、つながっているように見えますが、これはグルテンの粘弾力だけでなく、「圧力」に負う部分も大きく、一度手で「ぎゅっ」と握ると忽ち麺が切れてしまい、そうなると元の形には戻りません。よって長いうどんにゆであげるには、押出機からでてきた麺に、一切余計な力を加えることなく、そのままそっと沸騰している鍋の中に入れ、できるだけ早くでんぷんを糊化させる必要があります。つまり短麺を増やさないためには、排出機からでてきた生麺を、それこそ「腫れ物に触るように」扱う必要があるので、かなり神経を使います。

また加水率を増やせば繋がり易くなるかなと思い、標準的な加水率45%でやってみましたが、今度はほとんど全てが短麺になってしまいました。これは生地が柔らかくなり過ぎ、押出機の中で充分な圧力が加わらなかったため、ゆでる前の生地が「ひび割れ」状態であったためと考えます。

f412_2

②ロスが無視できない
モーターの逆回転させることにより、ミキサー内の生地を押出機に送り込むのは素晴らしいアイデアですが、製麺後かなりの量が、ミキサー内に残ってしまいました。よって一度だけしか製麺しないのであれば、このロスはかなり気になります。

③お掃除が大変
250gの小麦粉をうどんに加工するのは僅か12分程度ですが、作業終了後の清掃にはかなりの時間がかかります。特に押出機先端に取り付けたアタッチメントの穴には小麦粉が詰まっているので、一つ一つ丁寧に取り除く必要がありますが、これが結構大変です。

【総合的な感想】
ミキサーと排出機を組み合わせたアイデアはとても素晴らしいと思います。ただ①充分なグルテンを発生できないために、生麺の状態での取扱いが難しいこと、②ミキサー内の残渣、③清掃の手間といった問題点が気になりました。パスタを始め色々な麺類を製造するなら利用価値はありますが、うどんに限定するなら、少し手間がかかり過ぎるような気がします。「乾麺をゆでた方が早くて簡単じゃないですか」とは、あるテイスターの意見ですが、言われてみれば確かにその通りではあります。今後、この製麺機の可能性を、更に探っていきたいと思います。