新着情報#405 韓国の製粉事情・・・その②

f405多くの国々が参加しているTPPですが、私たちにとってみれば、実質的には日米FTAのようなものです。交渉も大詰めを迎え、この結果如何では、日本の製粉産業も激変するかもしれません。ところで韓国の小麦事情について、気になった点を簡単にまとめてみたいと思います。繰り返しますが、韓国は国産小麦を保護してないので、補助金は必要なく、よって海外の小麦は国際価格でそのまま韓国市場に入ってきます。つまり韓国は小麦輸入先進国とも言えるわけで、私たちにとっても参考になる点が少なくありません。

①国民一人あたりの小麦粉消費量
韓国における国民一人あたりの小麦粉消費量は年間35kg(画像参照、資料は㈱組合貿易さんにご提供いただきました)で、これは日本の32.7kg(#345)と比較すると、韓国の方が年間2~3kg多くなっています。これは誤差とみなすには少し大きな数字で、強いてその理由を考えるとチヂミの存在でしょうか。冗談はさておき、年間35kgの小麦粉というのは、どのくらいの考えてみてください。スーパーで販売しているうどん1玉の重さは200gで、それに含まれる小麦粉は約70gです。もちろんこれでお腹が一杯になる訳ではありませんが、毎日1玉ずつ消費すると、70g×365日≒26kgとなります。よって大雑把ですが、一食分の主食を小麦粉にすると、年間35kgを消費する計算になります。

一人あたりの小麦粉消費量

一人あたりの小麦粉消費量

②製粉会社の数
韓国の製粉会社の数は8社ですが、これは日本の90社(#110)と比較するとかなり少なくなっています。「人口が少ないので当然じゃないか」というのはご尤もですが、人口を加味してもかなり少ないのです。韓国の人口5000万人に対し、日本は1億2500万人と2.5倍です。よって韓国の8社を基準にすると、日本は8×2.5=20社でよいことになりますが、これは90社を遥かに下回っています。つまり韓国では、日本と比べて製粉会社の寡占化がかなり進んでいることになります。

実は記録によると、韓国でも1970~80年代には30社近い製粉会社があったそうです。そしてこの数字に2.5倍をかけると75社となるので、30年前の韓国は、現在の日本の状況と似ていることになります。そして韓国では、その後1990年に小麦の自由化が実施されると、競争が激化し、現在の8社に整理されたと言われています。よって日本も、もしTPP交渉によって小麦が自由化されたとしたら、韓国と同じ道をたどる可能性が大きくなります。つまり韓国は製粉産業の自由化という点では、先進国といえます。

挽砕量と製粉企業数の推移

挽砕量と製粉企業数の推移

③国産小麦
日本と違い、韓国では基本的に、国産小麦に対する補助金はありません。よって耕作条件に劣る国産小麦はどうしても割高になり、現在韓国での国産小麦価格は、輸入小麦の2.5倍となっています。勿論、小麦粉に加工すると2.5倍までにはなりませんが、この高い国産小麦粉が売れるかどうかは、消費者が国産小麦をどう評価するかにかかっています。2013年における国産小麦の生産量は38,000tなので、一定の評価は得られているように見えます。しかし輸入小麦の210万tに対し、国産小麦3.8万tは、僅か1.8%にしか過ぎないので、実質的にはほぼ「ゼロ」と言っても問題ないレベルです。

しかも更に詳しく聞いてみると、その多くは軍隊で優先的に消費されているとのことなので、実際に「2.5倍高い国産小麦に対する需要」は、1.8%よりも遥かに低いことになります。韓国としても食料自給率を上げるために、国産小麦の振興を図ってはいますが、この高価格が妨げとなり、需要は伸びていません。よって日本でも小麦が自由化されたとしたら、国産小麦はほとんど消えてしまうと予想されています。しかも日本の場合は、生産コストが少なくとも5倍以上と言われているので、更に条件は厳しくなります。国産小麦に対する需要は確かに存在しますが、これは「価格がそんなに高くない」という大きな条件がつくことを、韓国の市場は教えてくれているように思います。

国産小麦生産量の推移

国産小麦生産量の推移