#398 世界の小麦情勢(2013/2014年)

f398現在、日本国内では毎年80~100万トンの小麦が生産され、それ以外にアメリカ、カナダ、オーストラリアから併せて500万トン程度輸入されています(詳細は「小麦のはなし」をご覧ください)。そして先日、㈱組合貿易さんから今シーズンの世界の小麦情勢についてお話を伺いましたので、その内容を簡単にご紹介いたします。結論からいうと、各国ともは、今年は概ね良好で、特にカナダは10年来の大豊作だそうです。

【オーストラリア】
オーストラリアの小麦生産を妨げる最大の懸念材料は、干ばつです。今年も降雨不足により、作柄の悪化が懸念されていましたが、9月に待望のまとまった降雨があり、作柄は大幅に改善されました。我々が関心のある銘柄は、ASW とPHです。前者は言わずと知れた、麺用小麦で現在日本で生産されるうどん・そうめんなどの麺類の多くはこのASWから作られています。一方PH(プライム・ハード、prime hard)は、中華麺用に使用され、ラーメンの「ぷりぷり」とした食感をだすには、このPHが最適であると言われています。つまり大抵のラーメン屋さんの麺は、このPHが原料のはずです。

ただこの2銘柄は、どういう訳かオーストラリアの中においては、耕作される地域が異なります(#267)。ASWの産地は、西部の西オーストラリア州であるのに対しPHは東部のクイーンズランド州及びニューサウスウェールズが産地です。今年はどちらかといえば、西部よりも東部の降雨が少なかったので、PHは当初予想よりも少し減少しそうです。しかし全体の収穫量は2300万トンと予想され、これはオーストラリアとしてはかなりの豊作です。

【カナダ】
今年は雪解けが遅かったことから、作付遅延が懸念されましたが、5月は比較的乾燥したことで作付作業は急速に進み、その後は温暖な天気、そして降水量に恵まれたことから、生産量は上方修正を重ねています。10月4日現在、小麦生産量は2600万トンと、過去10年来の大豊作を見込んでいます。私たちが輸入している小麦は1CW( №1Canada Western)という銘柄で、これは現在パン用小麦としては、世界最高品質と言われています。

【アメリカ合衆国】
こちらも現在のところ、5800万トンと豊作が見込まれています。現在、私たちが輸入しているのは3銘柄、WW(ウエスタン・ホワイト、western white)、DNS(ダークノーザンスプリング、dark northern spring)、そしてHRW (Hard Red Winter)です。WWはケーキ用として最も適していると言われている軟質小麦です。またDNSはパン用小麦、そしてHRWは汎用的な強力粉として利用されています。WWで焼いたケーキは、ふんわりと仕上がり、「なるほどWWはケーキやカステラにはもってこいの小麦品種だな!」と実感します。しかしなぜかアメリカで見かけるケーキは、ザラザラ、ごわごわとした食感のものが多く、なぜWWでつくらないのだろうと、不思議な気がします。

さてここ最近は、穀物相場はやや高値安定傾向を示していて、国内の小麦粉価格も2期連続で値上がりしましたが、この予想通りの作況となれば来春は、少し下がりそうな気がします。ただオーストラリアに限っては、事情が少し異なるようです。というのは、下の画像(㈱組合貿易提供)からわかるように東南アジア諸国は、近年の経済発展に伴い、小麦の輸入量が急増しています。生活が豊かになれば、食生活も多様化し、そして小麦の消費も増えるということでしょう。特にインドネシアは今では日本よりも輸入量が多くなっています。

そしてこれらアジア諸国が輸入する小麦の輸入比率はオーストラリアが多く、よってオーストラリア小麦の需要は堅調で、よって価格は下がりにくいだろうとの見立てです。以前は、パン用小麦は麺用小麦より10~20%高いというのが相場でしたが、なんと現在ではこれが逆転しました。これは一時的なものかどうかは不明ですが、東南アジア諸国のバイイングパワーが更に強くなれば、この傾向は更に続くかもしれません。ASWはうどんの価格に直結するだけに、なんとか安定してほしいところです。

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