#368 「さぬきの夢」vs.「ASW」・・・乾麺

ご存知のように現在、香川で生産されている小麦は、「さぬきの夢」です。そして今後は、作付品種が変わろうとも、香川県で開発され、生産される小麦は、全て「さぬきの夢」という愛称で呼ぶことに決めました(#343)。より正確には「さぬきの夢」とは「香川県で開発されたオリジナル小麦の総称」ということです。

一方作付品種で言えば、現在は「さぬきの夢2000」から「さぬきの夢2009」への移行中で、昨年11月に作付された小麦は全て、「さぬきの夢2009」になりました。つまり今年収穫される小麦からは、すべて「さぬきの夢2009」になります。そこで今回は、うどん用小麦粉の業界標準というべきASWと、「さぬきの夢(品種はさぬきの夢2009)」をそれぞれ乾麺にして、うどんテイスティングしてみました。

①製麺適性及び外観 
両者とも#8の太さ(新着情報070)で試作してみました。これは乾麺としては標準的な太さで、普通量販店でみかける乾麺のうどんは、この太さです。両者とも同じ太さではありますが、厚さには若干の違いがあり、ゆでてみたところ、その違いは顕著になりました。つまりASWは厚く、そして「さぬきの夢」の方はかなり薄くゆであがりました。では、なぜASWは厚く、「さぬきの夢」は薄くなるのか?これはグルテンの強さ、つまり粘弾性の違いによるものです。

つまりASWのグルテンは粘弾性(粘性と弾性)が大きいために、ロールを通過時に薄く延ばされても、通過後にその弾性によって、生地がまた元に戻ろうとします。一方、「さぬきの夢」はグルテンが少なく、よって粘弾性が小さく、よって延ばした生地の復元力が弱く、ロール通過後もその復元力が小さいため、ロール間隙とあまり変わらない厚さになってしまいます。このように同じ間隙のロールを通過しても、グルテンの性質の違いによって、その厚さも異なってきます。

外観については、一見してわかるように、ASWはそのきれいな淡黄色が目を引きます。一方、「さぬきの夢」はその白さが特徴です。以前は、国産小麦といえば、そのくすんだ色調が特徴でしたが、現在は品種改良、および製粉技術の向上により、きれいな麺に仕上がるようになりました。

②食感 
グルテン違いは、そのまま食感の違いになって表れます。まずASW は厚くゆであがったのに加え、グルテンの弾性が大きいので、噛んだ時に歯が押し返される、その跳ね返りというか反発力を感じます。人によってはこれをコシと感じるかもしれません。一方、「さぬきの夢」は薄いので、気持ちきしめんのような食感で、ASWのような強い反発力はありません。しかし噛んでみると国産小麦特有の「もっちり」感、そしてつるつるとした「つるみ感」が印象的です。今回はテスト製麺でしたので、ロールの調整ができませんでしたが、量産するのであれば、「さぬきの夢」用にもう少しロール間隙を広げて、さぬきうどんらしさを強調することができるはずです。
③食味 
ASWは小麦でんぷんの甘味が感じられます。一方「さぬきの夢」の方は、一見、味が薄そうですが、しばらくするとほのかな旨みが口に拡がるのがわかります。その独特のつるみ感と、そのほのかな旨みが絡んで、とっても上品なうどんであると感じます。同じように製造してみても、ASWと「さぬきの夢」ではこれだけの違いがでます。そしてうどんの多様性という点からも、違うタイプのうどんがあるということは意義深いことです。ちなみに5人でテイスティングしてみましたが、好みは3:2と拮抗しています。とういうことはどちらもそれなりに市場があるということだと思います。