#336 機械製麺②・・・混捏(こんねつ)工程

混合(水合わせ)と捏練(捏ねること)を併せて、混捏といいます。純手打ちであれば、すべて手作業でやりますが、最近ではそういううどん屋さんはかなり少数派です。麺棒で延ばしている良心的なうどん屋さんでも、ミキサーくらいは使用しているところが多いようです。それでここでは、うどん屋さんでよく見かける2種類のミキサーを紹介いたします。

①ピン式ミキサー(混合が主体) 
歴史的には一番古いタイプのミキサーです。回転軸から直線状のピンが突き出てきるので、ピン式もしくはピンタイプのミキサーと呼ばれています。60~70rpm(回転/分)で回転する中速タイプです。一昔前、さぬきでは標準的な形式であった、うどん店を兼ねた製麺所では、大抵このタイプのミキサーがありました。小麦粉を入れたミキサーのスイッチを入れると回転を始めるので、そこへ塩水を少しずつ注入します。ポイントは一度に入れると塩水が均一にならないので、できるだけゆっくりと満遍なくかけることです。

ミキシングが進むと画像のような状態になります。加水率にもよりますが、比較的小さな塊やそぼろが中心となり、大きな塊を形成するまでには至りません。つまりピン式ミキサーはある程度の捏練はできるものの、混合が主体となります。その後はこの状態で暫く放置することにより(そぼろ熟成)、水回しが完全なものとなり、次の捏練(足踏み)工程が生きてきます。

 

②ニーダー式ミキサー(捏練が主体) 
そもそもミキサー(mixer)とは、ミックスするもの、つまり混合機のことです。それに対しニーダー(kneader)は捏ねるもの、つまり捏ね機になります。よって本来はミキサーとニーダーとは役割分担が異なる別物なので、ニーダー式ミキサーという表現は不自然で、実際は単にニーダーと呼ぶべきだと思います。ただうどん業界では慣例としてミキサーのことを両方の意味でこれまで使用してきましたので、敢えてこういう呼び方をしました。

ニーダーは、鹿の角のような形状の刃が両端から突き出ていて、これが8~10rpmという低速で回転します。よってこの動作により「捏ねる」つまり「足踏み」の効果が得られます。①ピン式ミキサーと同様、小麦粉を入れ、回転を始めた後、塩水を加えます。ここで注意すべきは、回転数が低速なので、一度に塩水を加えると、ムラができてしまい、塩水のかからなかった部分は当然グルテンができず、その後の作業性に問題を起こすことがあります。よって低速回転故に、塩水の注入には①ピン式ミキサーよりも更に気を遣う必要があります。よっては水回しが完了した状態の生地をここに入れ、捏練するのがベストかも知れません。

 

①ミキサーと②ニーダーのどちらが機能的に優れているのかと言われても、そもそも本来の役割が、ミキシング(混合)とニーディング(捏練)なので、比較のしようがありません。ただ加水率が47~48%と手打ちに近い「多加水」であれば、いきなり②ニーダーで捏ねても、加水を上手にやればうまくいくと思います。逆に30~40%の「低加水」なら、混合が主体の①ミキサーで処理した後に、別工程で捏練を行うのが良いはずです。特に乾麺などは、一般に低加水になるので、混合主体のミキサーで充分に水回しを行う方が無難かと思います。

尚、詳細は割愛しますが、①よりも更に高速回転で、小麦粉と塩水を連続的に混合させる、ミキシングに特化したミキサーもあります。機械製麺、特に乾麺製造においては、一度に300kgの小麦粉を捏ねることができる巨大なバッチ式ミキサーもありますが、30~40%という低加水が標準的な現状を考慮すると、こういった連続式のミキサーの方が、水回しがうまくいくので、適しているのではないかと思います。左は、連続式ミキサーから落下している「そぼろ状生地」です(本体部分は高速回転しているためにカバーで覆われています)。