#310 ニュージーランドうどん事情

ご存知ニュージーランド(以下NZ)はオーストラリアの東に位置する、日本よりちょっと小ぶりな国です。ただ人口はたったの427万人と、396万人の四国とほぼ同じなので、人口密度はかなりスカスカです。でも今年のラグビー・ワールドカップでは1987年の第一回大会以来2度目の優勝を飾り、その存在感を示しました。そういえば長い間、テニス界で世界ランクナンバーワンに居続けたフェデラーの母国スイスも人口僅か600万人です。だから日本だってこれからまだまだ頑張ってほしいところです。

さてそのNZからニックさんが讃岐のうどん事情を視察にきました。聞くところによるとニックさんは現在NZで寿司屋のFCを展開し、大成功を収めたので、その次の柱となる日本食を求めて市場調査にやってきたとのことです。ニックさんの展開する寿司店は現在34店舗、これはほぼ人口10万人に1店舗とかなりの普及率です。彼曰く、「NZではやっぱりお寿司の人気が絶大で、うどん・ラーメンなどの麺類はまだまだ足元にも及ばない」っと。

お隣のオーストラリアには最近うどん店ができたそうですが、NZにはまだなく、今後の可能性を探りにやってきたというところでしょうか。ヨーロッパやアメリカにはポツポツとうどん店が開店していますが、現在のところニュージーランドは、うどんについてはまったく手付かずの未開の地ということなので、NZのうどん事情はナッシングです。ということは日本のうどん屋さんも海外での展開を考えているなら今がチャンスかも知れません。

ユル・ブリンナーやカル・リプケンに似てると思ったのは私だけでしょうか?

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ニックさんは、「NZにおけるさぬきうどんの店舗展開の可能性」を探るために、二泊三日のほとんどはうどん店巡りでしたが、それだけでは物足りないというので、途中製粉工場にも立ち寄ってくれました。余談ですが、日本ではうどんに代表される和風麺だけでなく、パン、お菓子などありとあらゆる小麦粉製品が、それぞれ専用の小麦粉で製造されるため、小麦粉の種類は世界一豊富です。よって製粉工程もそれだけ複雑になります。

ニックさん、最初は興味深そうに見ていましたが、ふっと振り返ると姿が見えないので、どうしたのかと思ったら頭を抱えてうずくまっていました。「どうしたの?」と聞いたら、梁に頭をぶつけたそうで、誠にご愁傷様でした。何しろ建屋が古いため一部天井や階段は低くなっていて、「くれぐれもご注意を!」とお願いしていても、時々このような事件が起こります。特にニックさんのような方は、尚更ダメージが大きそうで、誠に申しわけありませんでした。

ところでうどんや蕎麦は究極の国民食であると個人的には信じています。というのは、寿司も天ぷらも刺身もラーメンも牛丼も、それぞれに美味しくて好きですけど、こってりしているので毎日となるとちょっと閉口してしまいます(齢のせいかも?)。その点うどんや蕎麦なら毎日食べる自信はあるし、実際香川にいるときは、毎日お昼はうどんです。また讃岐には蕎麦屋が少ないので、上京するとここぞとばかりに、気合いを入れて蕎麦を食べ歩きます。羽田の立ち食いそばに始まり、一泊二日で平均5~6食は食べますが、和風麺はいくら食べても飽きがきません。
日本ではこのような状況にも拘らず、諸外国において、うどんや蕎麦が寿司、天ぷら、刺身の後塵を拝している大きな理由は、その「すする音」に対する心理的な抵抗のためだと、以前から思っています。ざるうどんであれば、まだ無理をすれば丸めて口の中に放り込み、音をださずに、もごもご食べることは可能ですが、熱いかけうどんは、すすらないと火傷してしまいます。そこでニックさんにその素朴な疑問を聞いてみたところ、「確かに言うことはわかる。だからもしうどん店をオープンするなら、店内に大音量のロックンロールを流すのもひとつの方法かも知れんね」という興味深い答が返ってきて、思わず「座布団1枚!」と言いたくなりました。