#243 オーストラリアから小麦運搬船がやってきました!

7月1日、オーストラリアの麺用小麦ASWを積んだ貨物船ボゲレナ(VOGE LENA)が近くの林田港(坂出市)に入港したので、その荷役作業を見学してきました。現在、四国にある小麦の輸入港は坂出市にある坂出港と林田港の2港だけです。ボゲレナはオーストラリアのパース近くのクイナナ港から2万㌧の小麦を積んでやってきました。

林田港で7200㌧を降ろした後、大阪港で9800㌧、そして清水港で4600㌧降ろす予定です。ボゲレナはクイナナを6月16日に出港し2週間かけて林田港までやってきました。2週間というと随分早い気がしますが、パースと坂出との距離は約7500kmなので、単純に割り算すると平均時速はおよそ22km/hとなります。ヒコーキで10時間というと「えらい時間がかかるなあ!」という気がしますが、船で2週間と聞くとなぜか早く感じます。

ボゲレナの船倉は4つに仕切られ、其々5000㌧以上の穀物が積めるようになっています。各船倉にはクレーンが設置されていて、それで小麦を岸壁に設置されてあるホッパーに移します。ホッパーの下にはトラックが待ち構えていて、それをサイロまでピストン輸送します。このときクレーンの1すくいは9㌧。船倉に充分な小麦があるときは、スイスイとすくい出せるので、1時間におよそ300~400㌧を処理することができます。

今回、2つの船倉から4100㌧と3100㌧の小麦を降ろすので、受入れサイロの能力にもよりますが、無理すれば一日で降ろせないこともありません。ただ一方の船倉は空っぽにする必要があったので、降ろすのに2日かかりました。つまり小麦が減ってくると、クレーンの1すくいでは丸々9㌧は入らなくなり効率が悪くなってきて、だんだんと時間がかかるようになるのです。そして最後の方になるとブルドーザーが船倉に投入されそれで残った小麦をかき集めます。だから初めはスイスイ降ろしていても最後は極端にスピードが落ちてきてなかなか計算通りには終わらないのです。

また坂出港にはありませんが、もっと大きな港だとニューマ装置という更に進んだシステムがあります。これは巨大な掃除機のようなパイプを船倉に入れ吸引し、そこからサイロまで空気の流れにのせて小麦を直接搬送する方法です。

現在、日本で製粉される小麦は年間600万㌧程ですが、このうち90%はアメリカ、カナダ、オーストラリアから輸入されています。昔は国産小麦が主流でしたが、食の多様化に伴い小麦の消費が増え、いつの間にか品質に優れ価格の安い輸入小麦が主流になりました。これに伴い製粉工場の立地条件も大きく異なりました。以前は小麦産地に近い内陸部に点在していましたが、最近の製粉工場は全て港に建設されています。それも小麦サイロに隣接して、サイロから直接小麦を搬入できるようにしてコストを削減しています。

英語で製粉工場のことをミル(mill)といいますが、港湾の小麦サイロに隣接している工場をミル・サイロといい、大手製粉会社の新設工場はすべてこのミル・サイロです。ミル・サイロは別名、海工場とも言われ、それ以外の製粉工場は全て山工場として区分されます。つまりたとえ港に近いところに立地していても、サイロに直結していなければそれは山工場であって、効率が悪いとみなされるのです。弊社も当然山工場に分類されます(泣)。