#194 「つなぎ力」に着目したグルテンの性質

小麦粉にはたんぱく質が8~12%含まれていて、これはでんぷんに次いで多い栄養素です。含まれているたんぱく質の種類は80以上とも言われていますが、特に重要なのはグルテニンとグリアジンで、これが水と一緒になって、小麦粉特有のグルテンを形成します。

グルテンは一口で言うとチューインガムみたいな「ぶよぶよ」したもので、このお陰で小麦粉を水で練った生地は、ひとつにまとまることができます。新着情報#193で小麦でんぷんの性質をご紹介しましたが、小麦でんぷんだけでは、生地の状態でまとまる力はありません。ゆでてでんぷん質が糊化して初めてでんぷんは「つなぎ力」をもつようになります。生地の状態で切れずにまとまっていれるのはグルテンのお陰なのです。グルテンについての基本的事項は、(1)グルテン新着情報#112新着情報#113新着情報#177あたりをご覧ください。
グルテン採取は、手軽にできるので、みなさんも是非一度はとってみることをお勧めします。実際にグルテンを手にしてみると、小麦粉が生地の状態で持つ「つなぎ力」を実感できます。今回は強力粉、中力粉、薄力粉の3種類の小麦粉をそれぞれ10gずつ試してみました。普通は水6~7ccを加えますが、これは小麦粉の種類によって調整します。つまりグルテンが多くとれる強力粉なら7~8cc、少ない薄力粉なら5~6cc、そして中力粉はその中間です。理由は、採れたグルテン(湿麩)はその2/3が水なので、グルテンを多く含む小麦粉ほど多く水が必要だからです。

充分に捏ね、ぬるま湯に5分程度放置した後、生地中のでんぷんを洗い流しますが、このとき名人から教わったポイントを少し。最初はぬるま湯の中で、片手でもみほぐしますが、ある程度でんぷんが溶け出し、塊ができると、両手の指先で挟み、手を洗うように揉んでやると、効率よくでんぷんを洗い流すことができます。そして何度かお湯を取り替え、濁らなくなるとそれが終了の目安です。次に表面の水分をタオルで拭き取りますが、その後も両手の掌で挟んで、押しながら中の水分を絞り出してやります。

ただこのときの絞り加減は、個人差があるので、この手作業によるグルテンは必ずしも正確ではありません。ちなみに今回採れたグルテンは、強力粉、中力粉、薄力粉それぞれ4.00g、2.83g、1.81gでした(下画像参照)。つまり同じ小麦粉でも種類によっては2倍ものグルテンを含んでいることになります。

くどいようですが、採れたグルテン(湿麩)の2/3は水です。つまりグルテンは保水力が強く、小麦粉の生地を練ったときも、たんぱく質の多い小麦粉程、水を多く必要とします。これは言い換えるとたんぱく質の多い小麦粉の方が、水に対する緩衝力が大きい、つまり少々なら水が多くても少なくても対応できるということを意味します。大人と子ども、どちらもお腹一杯でも、大人ならまだうどんの一杯くらいは食べることができるのと同じです。そういった意味で、たんぱく質の少ない小麦粉は、水加減が難しく、少し多すぎると柔らかくなりすぎ、逆に少ないとまとまらず、なかなか微妙なコツが必要となります。

 

ところで小麦粉生地は、建物によく喩えられます。でんぷんがセメントで、グルテンが鉄筋です。でんぷんは熱すると糊化して、固まるのでセメントのイメージと合致しますが、グルテンはちょっと異なります。生地中では確かに「つなぎ力」を持っていますが、この状態では延びたり縮んだりするので鉄筋のイメージとはちょっと違います。しかし熱することにより固まり、ここで初めて鉄筋らしくなります。グルテンは熱することによりその「活性」を失うので、このことを「失活」といいます。実際、採れたばかりのグルテンはチューインガムのような感じですが、それをゆでてやると固まってしまい、もう伸び縮みはできなくなります。噛んでみるとカマボコみたいな食感です。

「角の立つ、しっかりとしたうどんを打つには、どうすればいいですか?」というご質問を時々いただきますが、ゆでたときに角落ちするのは、このグルテン構造がしっかりできていないので、その部分からでんぷんが溶け出し、丸くなるのが原因だと考えます。よってしっかりとしたコシのあるうどんを打つには、生地をよく練り、このグルテンの立体網目構造をできるだけ縦横無尽に張り巡らせることが重要で、特にたんぱく質の少ない小麦粉は、鉄筋の量が少ないので、それだけ効率よく配置する必要があります。