#183 ストックのふるわれ方②

ストックが網でふるわれるとき、目開きよりも大きいストックは必ずオーバーになるけれど、小さいものはそのときの状況に応じてスルーになったりオーバーになったりすることがあります。このとき極端なケースとして次の2つがあります:

①オーバーシフティング(Oversifting)
ふるいの面積に対し、ストックの量が少ない場合をいいます。普通、適量が流れているときは、目開きよりも小さなふすま片(小麦の皮)は軽いので遠心力によって外に放り出されオーバーとなります。しかし充分なストックが流れていないと、ふすま片はそのまま落ちてスルーになり、小麦粉に混入し色調が劣化します。

またふるい表面のストックが少ないと、ふるいの上を漂っている大きなストックはふるいとの摩擦で擦り切れ、小さくなり、ふるいを通過してしまうことがあります。しかしこれらは本来、オーバーとして次の工程で処理されるべきもの、例えばふすま片などであることが多く、結果として小麦粉のみじんの原因となったり、また純度を低下させたりすることになります。

②アンダーシフティング(Undersifting)
上記とは逆に、ふるいの面積に対し、ストックの量が多すぎる場合をいいます。このときはストックが十分にふるい切れないので、目開きより小さくてもオーバーになってしまいます。そしてふるい切れなかった小麦粉は次の粉砕工程にいってしまうので、小麦粉の歩留りが悪くなります。更には次の粉砕工程では、小麦粉が含まれているので、その小麦粉がロールの上で滑り(フローティングといいます)、製粉性低下の原因になります。

何れにしてもふるいを通過するストックの量は、多すぎても少なすぎてダメで、適量でないとうまくふるえないことになります。ではストックを定量的に供給するには、どうすればいいかというと、その一歩前の段階を定量的に流さないといけないことになります。っで、これをずっと遡っていくと、結局製粉工程というのは全ての工程が同時にうまく動いてないと、機能しないことがわかります。どこか一箇所で止まると、全工程が停止して、それが延いては製品の不同につながったりもします。言ってみれば30人31脚みたいなところがあります。

話がガラリと変わりますが、昔、中世で風車が考案され、それを動力として製粉がおこなわれました。しかし風は気まぐれで、何時吹くのか、また吹いていても突然強くなったり、止んだり、どうなるのかさっぱり見当がつかず、それを使いこなすのは実に大変でした。私たちが風車に対して持っているイメージというのは、のどかで牧歌的ですけど、実際に中で操作している人は、それこそハラハラどきどきの連続だったといいます。
そういう事情もあって、昔の人は「大きな風車を廻すのは、船の舵取りと同じくらい勇気が必要だ」と表現しました。

現在の製粉工場は、そこまで大変だとは言いませんが、それでも担当者はいつも気を遣いながら全体のバランスとります。何も不具合がなければ順風満帆ですけど、トラブルの発見が1秒遅れる毎に、後始末が10分余計にかかることになります。また一旦工場が動き出すと、できるだけ操業し続け、よほどの事が無い限りは止めないのが鉄則です。少々トラブルが発生しても、なんとか修理しつつ操業を続ける。それって、床に少々穴が開いて、水が入ってきても、掻いだしながら、そして修理しながら航行を続けるみたいなイメージに近いかも知れません。