#164 今時の小麦製粉⑦・・・純化工程

シフターでは、ストックの大きさの違いを利用して篩分けをおこないますが、これがストックを粒度別に分ける基本です。しかしふすま片(小さな表皮の破片)は、一旦小麦粉の中に入ってしまうと分けることができなくなります。ふすま片の混ざったは、うどんにしたときに、色がくすんだり、べとついたり、見た目や食感に影響するのでできるだけとり除くことが必要です。そこでそうなる前に、セモリナとふすま片とを分けるのが、ピュリファイアーです。ストックを純化(purify)する機械なのでピュリファイアー(purifier)と呼ばれています。

ピュリファイアーの構造は次のようになっています。セモリナとふすま片が混ざったストックが上から落ちてきて、振動しているゆるやかな斜面を流れていきます。斜面には網が目の細い順に並んでいるので、小さなセモリナから順番に下に落ちていきます。一方、上からは吸引しているので軽いふるま片は吸い上げられます。もしストックが小麦粉とふすま片なら両方とも吸い上げられてしまいますが、胚乳の塊であるセモリナは重く、吸い上げられることはありません。つまりストックはピュリファイアーを通過することによって、ふすま片を取り除き、大中小のきれいなセモリナにしてやることです。

具体的には、1Bロール通過後のストックのうち(新着情報#161)、2番目は大きなセモリナが中心、3番目は普通のセモリナが中心で、どちらも違うピュリファイアーで純化されます。このピュリファイアーできれいになったセモリナは、サイジングロールへと送られ、そこで更に細かく粉砕され、その多くは品質的にはもっとも上等な小麦粉になります。いってみれば、このあたりのストックが上級粉のポイントゲッターになります。

またどっちでも良いことですが、純化される前の大きなセモリナについては、リダクション・ロール(Reduction roll)でもう一段小さくし、セモリナの大きさをある程度均一にしてからピュリファイアーに送る方法もあり、これを「前処理」ということがあります。それに対し最初説明したように、セモリナ中心のストックはすべてピュリファイアーで純化して、その大きさに応じて、次のロール機に送る方法を「後処理」といいます。言い換えると、予めセモリナの大きさを揃えてから純化するのが「前処理」、また全てのセモリナを純化しておいてからロール機に送るのが「後処理」です。うどんとかケーキ用途には、どちらかと言えば軟らかい中間質小麦、または軟質小麦を使用するので、こういった場合は小麦が壊れやすく、そしてふすま片が混入しやすくなるので、「後処理」の方が優れていることになります。

ピュリファイアーの発明者はオーストリア人のパウア(Ignaz Paur)で、1807年のことと言われています。但し当時のピュリファイアーは現在のものとかかなり違う、唐箕(とうみ)のようなものでした。その後、改良を重ねたピュリファイアーはふすま片をきれにに分離することができるようになり、製粉業界に革命をもたらしました。ロール製粉機は製粉史上最大の発明ですが、ピュリファイアーはそれに次ぐものと言われています。

ピュリファイアーを使うと、それまで黒くてごわごわしたパンがびっくりするような白いパンに変わったと言われています(ちょっと大げさか?)。うどんも同様で、ピュリファイアーなしだと、くすんでぼそぼそしたうどんになりますが、きれいにしてやると淡黄色のなめらかな、のど越しのよいうどんができます。アメリカでは当時ピュリファイアーを使用した小麦粉は、それ以外の粉との差が歴然としていたので、パテント粉といわれ優れた小麦粉の代名詞になりました。また少々品質の劣る小麦であっても、ピュリファイアーにより上級粉を取り出すことが可能になり、その投資に充分見合うものだったという記録もあります。

稼働中のピュリファイアー

稼働中のピュリファイアー

近づくと、ふすま片が吸い上げられているのがわかります。

近づくと、ふすま片が吸い上げられているのがわかります。