#149 塩水濃度の違いはうどんにどう影響するか?

食塩がうどん生地に及ぼす影響(新着情報#111)は知っていますが、実際に食塩濃度が変わるとうどんがどうなるのか試してみました。違いがよくわかるよう、片方は塩水濃度20%(加塩率=食塩÷小麦粉×100=10%)、もう一方は塩水濃度5%(加塩率2%)でやってみました。両者の加水率は10%も違いますが、実際は食塩の違いで、水の部分は120gと114gとそんなに違いません。塩を多くすると生地が延びにくくなるので、この位の塩水でどちらもほぼ同じ硬さの団子になりました。

(作業条件)
A:塩度20%、加水50%(小麦粉300g、食塩30g、水120g)
B:塩度 5%、加水40%(小麦粉300g、食塩 6g、水114g)
気温:35℃、湿度:かなり高い
4時間熟成後での比較では、Bの方がかなり淡黄色が強くなっていますが、その理由は、食塩は熟成を遅らせる性質があるからです。つまり食塩濃度が低いほど、熟成が速く進み、その結果淡黄色が強くなります。実際に延ばしてみると、Aは塩度が高いだけに延ばすのに時間がかかります。生地はそこそこ柔らかそうですが、塩にはグルテンを強化する性質があるので、延びては縮みの繰り返しで、結構時間がかかりました。一方、塩度の低いBはスイスイ延びました。

4時間熟成後の生地の比較

ゆで上げ後の比較

これだけ極端に条件を違えると、できあがりのうどんには明らかな差異があります。B(食塩が少ない方)の特徴を簡単にまとめると次のようになりました:

(1)淡黄色が強い
上記の繰り返しになりますが、食塩が少ない方が熟成が早く進み、うどんの淡黄色が強くなります。しかし、更に熟成時間を延ばして(一晩置いて)ゆでたところ、うどんがくすんで見えました。つまり熟成速度が速いため、それだけポリフェノール・オキシダーゼの活性(新着情報#080)が強かったと考えられます。逆にいうと宵練りで一晩おく場合には、食塩濃度をある程度上げておくと変色を防ぐことができることになります。

(2)短麺が少し多い
これも食塩が少ない分、グルテンの力が弱くなるからです。特に、熟成時間が長くなるほど、この傾向が強くなり、うどんが切れやすくなります。比較的たんぱく質の低い「さぬきの夢2000」を使用し、熟成時間を長くしたときは、短麺が特に多くなります。

(3)風味がある
食塩が少ないせいか小麦粉の風味を強く感じます。それとも熟成の度合いが大きいのでそう感じたのかもしれません。Aは塩度が多かっただけに、うどんにほのかな塩味が残っていて、これはこれで美味しいけど、このあたりの好みは分かれるかもしれません。

(4)うどんが明らかに硬い
これが多分両者の最大の違いでしょう。食感がまるっきり異なります。Aは粘弾性があり、もちもちとした食感がありますが、BはAに比べると明らかに硬く、また弾性に乏しいので羊羹や蒲鉾のような食感に近くなります。食塩を多くすると、ゆでるときに食塩とゆで湯との置換が速く進み、その結果ゆで時間が早くなりますが、こうやって極端なケースで比較するとよくわかります。個人的にはこの蒲鉾板のようなうどんは小麦の風味が強く、味わいもあるので好きですが、3人でのうどんテイスティングの結果は、2:1でAの方に軍配があがりました。