#078 グルテンの性質の変化

広島県T.M.さんからのメール

「讃岐すずらん」、「さくら夢2000」を使用して手打ちうどんを美味しく楽しんでいます。しかし、どうしても、出来あがりの麺が短くて不満です(教科書通りの手順・時間をキチッと守っています)。もっと長い麺を作りたいのです。原因と対策をご教示下さい。

 

うどんが切れるといっても、色々な原因があるので、文面だけでは見当がつきません。そこで電話してみました。以下、核心部分のやりとり:
こちら:「そうですか、うどんが切れるんですね?」
Mさん:「そうなんです。ちゃんと手順通りやってるんですが、短くなるんです」
こちら:「塩水の量とか濃度、また熟成時間なんかも普通なんですよね?」
Mさん:「そうです。でも、昨日届いた粉では、ちゃんと長いうどんができたなあ!」
こちら:「新しく届いた粉ではきちんとできたんですね。ちなみに、それまでお手元にあった小麦粉はいつ購入されたもんですか?」
Mさん:「これは、もう半年以上前になるなあ」
こちら:「(えぇ!そんな古い小麦粉を使っていたんですか!?)。同じようにつくって、古い小麦粉では切れて、新しい小麦粉では切れずに長いうどんができるんですね。だったら原因は、小麦粉の鮮度しかないですね」
Mさん:「やっぱり、そうなんかな?」
こちら:「それは時間が経過し過ぎたために、グルテンの量はかわらないけれど、その性質が変化したんですね、きっと。これからは小麦粉はできるだけ新しいものをお使いください」

小麦粉には80種類以上のたんぱく質が含まれていますが、その中で特に重要なのがグルテニンとグリアジンです。というのは、この2つが水と一緒になって、小麦特有の「ねばねば」したグルテンになるからです。建物に例えるとグルテンが鉄筋、またでんぷん質がセメントの役割をします。建物をたてるとき、いくらセメントがあっても、鉄筋がないと崩れてしまいます。同様に、小麦粉の中にグルテンがないと、うどんはうまく繋がらず途中で切れてしまいます。

そしてうどんづくりにおいて、練りが重要なのは、十分に練ることによってグルテニンとグリアジンが水と結合してしっかりとしたグルテンになるからです。延ばしによって、このグルテン(鉄筋)が縦横無尽に延び、うどんが切れることなく、しっかりと結びついていることができるのです。またいくら鉄筋の量が多くても、一ヵ所に固まってしまうと、他の部分は崩れてしまいます。麺棒で四方八方延ばすことの意味はここにあるのです。

でもこのグルテンも時間と共にその性質が変化します。グルテンの量は変わらなくても、質が変わるんです挽き立ちの小麦粉のグルテンは、しなやかな伸展性のあるものであっても、時間が経つにつれ、だんだんともろくなっていくのです。その結果、あまり古い小麦粉を使うと、グルテンの粘りがなくなり、今回のようにうどんが切れてしまうと考えられます。このグルテンの性質の変化については、こっちの「小麦粉の熟成」も参照してね。

さて、小麦粉の適切な賞味期限を設定するために、ある団体では次のような実験をしました。
実験:小麦粉を室内(室温7~24℃、湿度32~81%)に1年6ヶ月保存し、3ヶ月毎に品質の変化を調べた。調査項目は:

  1.基本的なデータ(水分、ph、色調、かび数など)

  2.二次加工試験、つまりうどんやパンなどを作ってみて、食味及び作業性の変化の有無。

結果: 1年6ヶ月経過しても、(1)の基本的データについては、品質の劣化は見られなかった。しかし、(2)の実際にその小麦粉を使用した結果においては、小麦粉の種類、またその用途によって、変化が現れる時期が違った。詳細は割愛しますが、ここでの結論は次のようになりました:
強力粉     ⇒ 6ケ月を過ぎると変化が見られた。
中力粉、薄力粉 ⇒ 1年 を過ぎると変化が見られた。

うどん用の小麦粉は中力粉なので、上記の結果に従うと1年間は大丈夫となりますが、これはもちろん保存状態にもよります。だからMさんの場合は、何らかの原因で、上記より早い6ヶ月でそのような結果になったのでしょう。ちなみに「6ヶ月経った小麦粉では、味の方はいかがでしたか?」と聞いたところ、意外にも「美味しかった」と。でも、両方作って食べ比べてみると、やっぱり新しい小麦粉の方がぷりぷりして美味しいと感じるはずだけどなあ。

結論: 小麦粉はできるだけ新しいものを使いましょう。